[ネタバレあり] 倫理を通して自分と向き合う「雨瀬シオリ/ここは今から倫理です。2巻」あらすじと感想

 愛着障害

 

問題を抱えた生徒たちを、「倫理」を用いて少しずつ

変えてきた高柳ですが、

この巻でいきなり壁にぶつかります。

 

彼が受け持つクラスにいた生徒は、家庭環境のせいで、

人との距離感も分からず、逆に

懐いた人には過度なスキンシップをしてしまう

「愛着障害」というもの。

保健の先生は、彼に合わせるように言いますが、

高柳は「それでは解決にならない」

と拒否。

 

この回は、高柳の、恩師との会話の回想も入りつつ、

自分の言動・行動が正解なのか

分からない、悩み葛藤する高柳が出ます。

 

この辺りも、一貫冷静系の教師モノと大きく

違うところで、最近だと2月の勝者の黒木

みたいに、とにかく合理的なタイプとは異なる教師像です。

基本的には色々な事象に対して動揺しないタイプですが、

完璧な人間ではなく、つまずく

ところも、2巻の時点で出てくるというのは面白いです。

結局このケースは、完全解決とはいかずに

ここではいったん話は終了します。

後々また、愛着障害の彼は再登場するのでしょうか。

高柳がどういう答え、どういう行動を出すのか見ものです。

 

 

 仮面(ペルソナ)

 

このあとの2エピソードは、どちらも素晴らしい内容です。

1つ目の山野亮太は、自分が普通である事に悩んでいます。

家庭環境も、自身の能力も。

自分が、その他大勢に埋もれていく事に恐怖を

感じているという悩み。

これに対し高柳は、普通は恵まれてるとか、

幸せとかありきたりな事は言いません。

「自分が普通である」という、自分が何者であるかを、

自覚出来た事自体が、自分という

人格を有することが出来たことが素晴らしいと言います。

 

「特別な存在」になりたい山野に対し、

どうすればなれるか悩みながら生きていきましょう

と諭します。

 

2つ目は、自身の素性を隠してSNSにハマる安村。

彼女は地味な自分とは違う存在を、SNSに

作り上げたことで、それに没頭してしまい、

授業そっちのけで自身のツイートへの反応を

気にして、高柳に見つかります。

 

高柳はSNSをやっていたこと自体は責めません、

人はそれぞれ、色々な仮面(ペルソナ)を常にしている、

娘の仮面、生徒の仮面、

SNSユーザーの仮面。それらを、1つ目の例の

山野で取り上げられた心の中を

個人的ペルソナとすると、社会的ペルソナと言うそうです。

高柳が指摘したのは、安村はSNSユーザーと

しての仮面を愛するあまり、生徒としての仮面を

蔑ろにしてるのではないか。

この後の、高柳の"お願い"を聞いて、

安村はSNSアカを削除し、生徒としての新しい一歩を

踏み出しました。

 

 

 まとめ

 

安定してますね。

1巻に続き、毎話倫理の授業を、至極具体的な

事例を用いて表現されていく1話完結型の

ストーリー。

高校生の頃って、倫理はやっぱりどうしても

現実に具体的に当てはめる事が難しくて、

自分は半ば暗記教科のように捉えてしまって

いましたが、この作品を読むと

どれも凄くしっくり来ますね。

誰の言葉かは、さほど重要視されずに、

その考え方の中身に絞って取り上げられているのも

頭の中に入ってきやすいポイントだと思います。

 

それからこの巻では、高柳の変人っぷりというか、

笑いのツボのズレ方も垣間見えて

面白いです。抜けてる部分と抑えてる部分が、

どの教師モノにもないのも、この高柳と

この作品の魅力の一つだと思います。

 

今回のラストは、金八先生末期のようなかなり

重々しい展開になってきていますが、

ここにどうやって高柳が絡み、倫理が用いられ

るか凄く楽しみな終わり方でした。

 

「倫理」とは人倫の道であり、道徳の規範となる原理。学ばずとも将来、困る事はない学問。しかし、この授業には人生の真実が詰まっている。クールな倫理教師・高柳が生徒たちの抱える問題と独自のスタンスで向かい合う──。新時代、教師物語!!

 

 

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ブログ主
りかるど

ブラジルのサンパウロ生まれ。5歳で日本へ。
小中高大卒業後、書籍業界へ就職。現在はフリーでブログ運営などネット中心に活動中。趣味は漫画、スポーツ観戦、音楽ライブ、お笑い等。

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