[雑記] ネタバレ注意:決算!忠臣蔵 感想 「感情をもてあそぶ予算時代劇」

 

アナ雪2が結構久々の映画鑑賞で、

昔使ってたところが移転して以来の

初めての場所で観たんですが、それが

思いの外快適&便利だったので、続けて

また観に行ってしまいました。

 

今回見たのは「決算!忠臣蔵」

豪華なキャスト陣が話題になってる作品ですね。

土台はもちろん赤穂事件で、それを元にした数多

ある「忠臣蔵」作品の1つの視点とした著書

「忠臣蔵の決算書」を原作としたのが本作です。

 

忠臣蔵ファンではないですが、自分も大まかな

この事件の概要は知った上での鑑賞でした。

 

今回も箇条書きスタイルで行きます。

 

悪かった点

・ポスター詐欺

 

・ポスター詐欺

結果的にそこまでマイナスなポイントには

なりませんでしたが、ポスターや色々な

ところ、番宣だと堤真一と岡村隆史の

ダブル主演のように宣伝されています。

ですが、どう観ても堤さんソロ主演

岡村さんも重要な役どころではありますが、

同格では全くなく、むしろ作中ポジション的

には間違いなく濱田岳さんの方が上です。

 

ていうかまず途中で死にますし・・

確かに岡村さんの出演はインパクトは

大きいですが、公式などで並べるのは

オーバー過ぎるんじゃないかと思います。

 

 

 

良かった点

・ギャグとシリアスの抑揚

・適材手所のキャスティング

・予算の表現の仕方

・終わり方

 

・ギャグとシリアスの抑揚

予告を観ても分かる通り、この作品は

基本的にコメディです。

主役である大石内蔵助がずっと頼りなく

進んでいくのですが、途中から浅野家を

めぐる風向きが変わりだしてから、一気に

シリアスな空気に変わります。

で、そのまま最期までいくかと思いきや、

また急にコメディに切り替わります。

終盤のこのジェットコースターのような

乱高下が続くせいで、平常ならそこまで

感情揺さぶられないようなシーンでも、

コメディからのギャップで泣きそうになる

場面が何度もありました。

 

 

そういう落差で感情を揺さぶる畳み掛け方は

本当に上手いと思いました。

 

・適材手所のキャスティング

公式の相関図を観ても、分かる通り

この作品は出演者が豪華でなおかつ

個性派だらけです。

 

 

よしもとが製作に関わっていることもあり

芸人が多数出演していますが、ほとんどの

役は実際にテレビに出ている時のキャラに

準拠しているので、舞台が関西であることも

あり、とても自然です。

 

岡村さんは普段の口調ですし、西川きよし師匠

にいたっては「小さなことからコツコツと」と

普通に自分自身の名言を言っちゃってます。

 

そして本職俳優陣はその芸人たちに負けない

個性派揃いで、こんだけ芸人やってるインパクト顔

だらけの中でも印象に残る俳優ばっかり。

言い方は悪いかもしれませんが、イケメン枠がほぼ無し

カッコよくスマートにキメる役割は無く、無骨に男臭い

人達しかいません。

 

女性陣の中でも、石原さとみ演じる瑤泉院は、

超ドSな雰囲気のザ・女帝なこの役を良い感じに

大げさに演じれていて、大石への圧力のかけ方は

凄みがありました。

 

総合して個人的に特に良かったのは

作品としては悪役といえる大垣藩主役の滝藤賢一さん、

岡村さん死亡後の予算管理の中心役の小松利昌さん

の2人です。

滝藤さんはそこまで出番は多くないですが、存在感

抜群でした。この人は本当に何でもできます。

小松さんは討ち入り前の最期の会議でのリアクションが

抜群に良かったですね。予算がどんどん飛んでいく流れで

大石が無になっていくのと並行して、どんどん顔色が

悪くなっていく、絶望していく演技は最高でした。

 

このキャスティングは大正解ですね。

 

・予算の表現の仕方

テーマが赤穂藩の財政事情なので、

お金の表現が非常に大切です。

まず冒頭で、この作品における

モノの価値の基準を定義しておくという

始め方は凄く良かったです。

しかもこれがエンディングへのちっちゃい

伏線になっていたのも素晴らしいです。

 

そして何かコストが発生する事象がある度に

そのコストが毎度毎度表示されるという

仕組みですが、終盤になると切羽詰まりすぎて

リアルタイムでどんどん減っていくようになり

バラエティー番組みたいな右下予算表示になる

ので、単純に「刀ってこんなするのか」とか

「フル装備の防具高いなあ」とか現代感覚で

楽しめました。

どんどん減っていくとこで、弥左衛門が

数字を隠すというメタ演出もおしゃれでした。

 

・終わり方

ここは他のレビューなどを観るとむしろ

悪い点としてあげられているのですが、

私は好きな部分です。

忠臣蔵と冠しておきながら、最後に討ち入りを

するところまで描かず、金銭感覚が鋭くなって

うどん屋での予想より高い値段に狼狽するところ

で終わりました。

 

確かに忠臣蔵=吉良上野介を討つまでがメインな

ことが多いですが、この作品ってどう考えても

そこはメインじゃない。それにこの作風で詳細に

討ち入りを描いても、それは絶対この作品のやる

領域ではないと思います。

 

だからこそ、ゆるく始まってゆるく終わる。

赤穂藩の財政はあの会議ですでに、決着を迎えて

いて討ち入り自体がもう後日談です。

瑤泉院に手紙と共に返した時点で、お金の動きは

ストップしましたし。

 

なので、この作品はこの終わり方でなければ

いけなかったとさえ思います。

 

 

 

まとめて思ったのは、同じ出来事であっても

描き方、終わらせ方、焦点の当て方でいかようにも

面白くなるということです。

 

自分は日本史が好きで漫画好きなので、当然

歴史漫画が大好きで、色ーーーんな戦国時代も

色ーーーんな幕末も読んできてますが、やっぱり

雰囲気は各々全然違います。へうげものもセンゴクも

信長協奏曲も信長の忍びも、それぞれ同じ時代を

描いていますが、ぜんぜん違います。

 

今作も大石内蔵助が一般的なイメージとは違い、

普段は頼りない女好きな好色男として描かれています。

この人物設定は諸説あるうちのひとつであり、

信頼度の高いものではないようですが、可能性のある

ものです。

 

忠臣蔵はこうでなければならない、大石内蔵助はこうで

なければならない。この作品の批判的な意見にはこういう

固定観念が強すぎる理由が元になっているものが結構

多くてそれはどうなんだ?と思ったので書いてみました。

 

どう思うのも個人の感想ですが、これは○○じゃない!と

一般化して批判するのは違うなと思いますし、この作品に

限らずそういう視点は自分も持たないように気をつけないと

いけないです。

 

高速参勤交代もそうですが、歴史のなかなか描かれない部分を

コミカルに描く作品は面白いものが多いです。

そこまで歴史好きじゃない人もとっつきやすいし、何より

日本の歴史なので日本人にしか作れない娯楽作だと思うので

1人の日本史好きとして今後も増えていってほしいです、

 

りかるど

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ブログ主
りかるど

ブラジルのサンパウロ生まれ。5歳で日本へ。
小中高大卒業後、書籍業界へ就職。現在はフリーでブログ運営などネット中心に活動中。趣味は漫画、スポーツ観戦、音楽ライブ、お笑い等。

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