今回の巻では、時事ネタなど、現在の出版業界を取り巻くリアルな環境が描かれました。
と、一発目がまさかの、一寸先生の文○砲!
完全にホワイトだったんですが、相手の女優は、舞台版ツノひめの主演で、
つながり方はSNSという、妙にリアルな状況でした。
一寸先生も、あわよくばという気持ちはあったというところも
生々しくて面白いですね。
電子書籍化って、どちらかといえば「やむを得ないもの」として描かれがちですが、
今回のエピソードでは、むしろ新しい可能性として登場しました。
過去に打ち切りを経験した府川先生が、今回のメイン作家で、
電子書籍会社の話と並行して話が進みます。
黒沢が新しく担当として交代した府川先生は、前作に自信も愛情もあっただけに、
打ち切りのショックもあって、完全に新作は手詰まり。
一方で電子書籍の会社では新企画立ち上げに際して、府川先生の打ち切り作
「あに丸ジャンクション」
が、この作品に思い入れのある、1人の編集者に推薦により、ピックアップされます。
そんな企画が進んでいても、府川先生本人は「1巻無料にされるなんて、いらなくなった作品
を投げ売りされてるだけ」と悲観的に捉えています。
ところが蓋を開けてみると、あに丸はあれよあれよという間にヒット、
しかも、元々バイブスの読者層ではない層にウケての大ヒットになったのです。
ここで一番興味深かったのが、バイブス編集部にではなく、電子書籍の会社に
あに丸のファンレターが届いたところです。
「雑誌の概念が消えつつあるとは知っていたが、そこまでとは」との編集長の言葉にも
ある通り、現実にもこの傾向は非常に高まっているように感じます。
電子書籍1巻無料で入った人達が、あに丸ジャンクションの単行本を求めた結果、
大量重版がかかる、逆転現象が起こりました。
単行本→電子書籍
のい一方通行ではなく、そのあとに
電子書籍→単行本
という流れが生まれました。
作家と編集者、編集者と業者、作家と作家など、内側が描かれることが
多かった重版出来!が、より読者に近い構図を書いた巻でした。
いまのコミック業界ってまさに、今の傾向が強いと思って、それは雑誌の売上の大幅な
減少にも現れています。
でも今回描かれたのは逆に、そんな状況で生き残る道と、可能性でした。
過去に打ち切りになった作品も、雑誌名などの仕切りを取っ払えば、ヒットする可能性が
ある。電子書籍の成功が、単行本に帰ってくる。
そもそもが現在は、「小説家になろう」サイトからデビューして、後にコミカライズ。
ウェブコミックでヒットして、単行本でもヒット。twitterで書いてた漫画が、編集の目に
とまり、単行本化と、昔の売れ方と全っ然違います。
そこにしっかり向き合って描かれたこの巻は、そういう点で大きな意味があったと思います。
最後に、あに丸の再ヒットを、府川先生が電子書籍サイトや、店頭に並んでるのを見ても
そこまで実感出来なかったのが、いつも通っているラーメン屋に新しく置かれていたのを
見て、いちばん深く実感するシーンは、すごく印象的でした。
反響が直に届くことが、作家の大きなモチベーションになる
ということを感じ取れたエピソードでした。
好きな作家さんに、いい作品書いてもらい続けるには、買うことをしていかないとですね。
もうひとつ、この巻では全く登場しないと思われた、中田伯が最後に登場するのですが、
何やら新しい変化が起きているので、次の巻が楽しみですが、同時に依然として
彼の中に潜む狂気が見え隠れしていて、今回もそういうシーンが何度かあったので
ビクビクしながら読みました(笑)
とある芥川賞作家であれば、
指折り、ドロップキックは当たり前なので、彼女よりは安定していてよかったです。