タイトル:BLUE GIANT
掲載雑誌:ビッグコミック (2013- )
作者:石塚真一
代表作→岳 (2003-2012)
→北狼 ラストハンター (2013- )
あらすじ
ジャズに心打たれた高校3年生の宮本大は、川原でサックスを独り吹き続けている。
雨の日も猛暑の日も毎日毎晩、何年も。
「世界一のジャズプレーヤーになる…!!」
努力、才能、信念、環境、運…何が必要なのか。
無謀とも言える目標に、真摯に正面から向かい合う物語は仙台、広瀬川から始まる。
石塚先生は、自身の経験を生かした
岳で連載デビューをし、後に映画化。
第1回マンガ大賞を獲得するなど、
大成功を収めました。
本作は、前作とは打って変わって
ジャズをテーマにした音楽作品で、
国内を舞台にした
BLUE GIANT
その後海外を舞台にした
BLUE GIANT SUPREME
の二部に分けて現在はSUPREMEに
移行しています。
ロックやクラシックを扱うことが
多い漫画作品の中で、この作品は
ジャズをテーマにしています。
日常的に聴くことの多いポップスや
ロック、吹奏楽などで実際に演奏
する機会のあるクラシックと比べて
馴染みの薄いジャズの世界です。
主人公宮本 大(ダイ)も、最初はジャズを
全く知らない中学生でした。
ジャズというものが他のジャンルと
何が違うか、どういう人達が、どういう
場所でプレイしているのか。
この作品を読むと詳しくなることも
出来るし、間違いなく興味を持つと
思います。
この作品の特徴として、ダイの様々な
岐路の後に↓のようなシーンが流れます。
ドキュメンタリー作品などで必ず出てくる
インタビューシーンですね。
つまり、こういうインタビューを撮って
いる時点で、将来ダイがどうなるのかは
暗示されているのです。
しかしインタビュー以外に現在のダイの
姿や、いま現在何をしていのかは具体的
には一切語られません。
彼の現在や過程はあくまで、作品本編と
インタビューを受ける人達の語るエピ
ソードの端々で推察するのみです。
このようにドキュメンタリー方式で、
ダイのジャズサクセスストーリーが
語られているのがこの作品の特徴です。
この作品、現実のジャズとのコラボも
していたり、文化庁メディア芸術祭の
大賞を受賞するなど、すでに高い評価を
得ていますが、まだアニメ化実写化の
話はありません。
おそらくその大きな要因のひとつが、
演奏シーンを原作の熱量で表現できない
からだと思っています。勿論他にも要因は
いくつかあるでしょうけど。
とにかくダイが演奏するシーンは、
感情を揺さぶります。
この作品は演奏する際のパッション、
熱量を重視しているように思えます。
こういう部分ってなかなか映像には
しづらく、ましてや俳優に演じさせるのは
非常に難しいはずです。
それこそ、セッションという映画の
ラストのドラムソロシーンほどの熱量が
必要だと思いますが、あれが出来る人は
そう多くないと思います。
セッションを見たことがある人には、
あの熱量がずっと続く作品であると
想像してもらっていいです。
BLUE GIANTの演奏シーンは、他の
作品を圧倒する出来栄えです。
音楽漫画の中でも屈指の面白さです。
1巻ではまだまだダイは演奏が
上手くないのですが、それでも
十分、ジャズというものについて
知ることが出来るし、彼の演奏の
凄さも伝わってきます。
私もこの作品を読んで、何度か
大きめのジャズのイベントに
聴きにいったりしてますが、やはり
静かなお店で静かに流れるジャズ
よりも、ダイがやるような全力の
爆音ジャズが、実際に聴くのも好き
になっています。
演奏シーン抜きにしても、彼のサクセス
ストーリーは読み応えがあるし、ダイの
真っ直ぐで折れない性格が、
読み進めていってもブレないところの
カッコよさが好きです。