[ネタバレあり] 劇場版BLUE GIANT 原作ファンが思う成功した3つの理由 [音楽アニメ映画の完成形]

インフルエンサーの絶賛からジワジワ火が付いて

観客動員が遂に50万人を突破したBLUE GIANTですが、

今作のストーリーを知っているにも関わらず大号泣した

原作ファンの私目線で、何故ここまでBLUE GIANTが

ここまで大絶賛される作品となっているのか、

考えてみました。

 

エピソードチョイスが良い

まず最初にこの理由を挙げたいです。

BLUE GIANTは大きく分けて

 

仙台編

東京編(JASS編)

ヨーロッパ編(NUMBERFIVE編)

アメリカ編(ダイミヤモト モメンタム編)

 

の4つに区切られますが、普通なら初めての劇場版なら

最初の仙台編からやっていきます。ダイがジャズを始めた

きっかけ、ダイのサックスはどのようにして手に入れたのか

どうやって誰に基礎を学んだのか。この辺の流れも非常に

面白いストーリーがあるのですが、敢えてバッサリカット。

序盤の練習シーンでダイジェストとして流しています。

 

しかし、これが大きな大きな英断だったと私は思います。

 

TVアニメとして始めるなら、原作1巻からやっていくことに

異論のある人はいないですが、これはあくまで限られた時間の

映画作品。

しかも原作は完全に成功した作品とは言え、まだ映像作品

としては未知だし漫画ファン以外には知られていない作品。

更にジャズという日本においてマイナージャンルの音楽。

 

この条件下で大ヒットさせるために最良の選択だったのが

東京編だったのだと思います。

全シリーズに胸を熱くさせるドラマがあるBLUEGIANTですが、

その中でも観客に最も馴染みがあり、東京に実在のジャズクラブを

元にしている東京編が感情移入しやすい上に、ユキノリの事故

からのソーブルーライブという、BLUEGIANT史上最もショッキングで

ドラマチックな展開で締める東京編は映画との相性は抜群でした。

東京編の中でも、三輪が登場しなかったり、雪祈はあくまで

SOBLUEの系列店の出演にして、SOBLUEはJASSとしてが初出演に

変えていたり、細かい改変もより3人でのドラマ性を高めるための

いい効果を生んでいたと思います。

 

 

ハードルを乗り越えた演奏シーン

漫画→アニメあるいは実写化した音楽アニメは

無数にあります。しかしそのどれもが高い壁と

なって立ちはだかるのが、音源化です。

 

漫画には勿論音は入っていません。しかしその

作中では音楽が奏でられ、それが人々の心に刺さり

物語が進んでいきます。

映像化するにあたって、製作者はただ登場人物たちを

動かすだけではありません。人に刺さった原作の音楽

現実世界に実現しないといけません。

その実現のために過去のプロたちは色々な方法を取って

きました。

 

BECKはコユキの歌唱パートを無音にするという決断を、

アメリカの世界的歌手が登場するDr.STONEや、

圧倒的な歌で人々を催眠状態にするFILMREDのウタは

喋りパートと歌唱パートで声優を分けました。

 

本人が演奏する必要がないという意味ではBLUEGIANTは

有利といえるかもしれませんが、簡単な話ではありません。

主人公ダイ・ミヤモトはジャズプレイヤーの階段を

上がっていく前から凄まじい素質を持ったプレイヤーで、

素人時代から度々客や周りの人をその演奏で驚かせています。

 

当然、読者はどれほどの演奏をしているのかのハードルは

ガンガン上がっていきます。特に東京編では、耳の肥えた

ジャズファンにも刺さるようになり、10代で日本最高峰の

舞台に立ち、客を魅了するプレーをしているので、それ程の

プレーなんだとハードルが一気に上がったところです。

 

しかしこの映画はそのハードルに見事に応えました。

ダイのダイナミックなプレーは完全に映像として音として

再現されており、「え、こんなもん?」とは一切ならない

迫力がありました。

それだけでなく、コットンズでのユキノリの殻を突き破る

演奏シーンと、悲壮感漂うSOBLUEでの片手での演奏シーンの

ようにその時の感情が乗っかった"音"になっていましたし、

玉田の初舞台でのあまりにもリアルな初心者感あるドラム

演奏からの、SO BLUEでのとんでもない成長ぶりは、ただ

プロフェッショナルの演奏をするだけではない非常に難しい

場面だったと思います。

玉田の古参ファンのおじいちゃんもそりゃ号泣します。

 

それからコットンズでのフレッドの洗練されてて上品な

サックス演奏を見せることで、ダイのスタイルとの対比を

させて、どれだけダイがパワフルな演奏なのかを強調して

いるのも素晴らしい演出でした。

 

日本最高峰のジャズプレイヤー上原ひろみさんを中心に

この映画のために集まってくれたプロの方々、この編成を

実現させた制作陣に感謝しかないですね。

 

 

 

声優の演技力

メイン3人、というかJASSのメンバーの声優さんが

輝いてました。3人共本職俳優にかかわらず、

1ミリも違和感のない演技をされていました。

 

特に終盤で原作だと分からなかった、ユキノリが

事故に遭ったことを玉田に電話で伝えるシーンの

今にも決壊しそうなダイの声は見事すぎましたし、

あの一連の流れは漫画だと気丈なダイが目立って

いたので、山田さんの演技によってダイの感情が

鮮明になったのは原作ファンとしても新しい発見が

ありました。

本職じゃない人達への風当たり、10年前よりは

かなり減りましたが、未だに劇場で聞く前から

文句言う人達もいますが、そろそろ考え方を改めた

方が良いし、今回の大成功例はもっと広まって

ほしいところです。

 

次回作への期待

これだけの傑作を目の当たりにすると、

どうしても次回作に期待せざるを得ません

 

個人的に町おこしフェス編が原作の中でも

トップクラスに好きなので、そこをやって

くれると特に嬉しいです。

玉田とユキノリの演奏は存分に味わえましたから

ラファエルブルーノの演奏を聴きたいです。

特にハンナのウッドベースは再現した時にどんな

響きになるのか一番興味あります。

 

最後にまとめると、今作が大成功に至った要因は

 

①エピソードチョイスが良い

→映画1作目として最初から描いていくよりベストな選択

②ハードルを乗り越えた演奏シーン

→非常に高かった原作ファンの期待すら叶えた最高の布陣

③声優の演技力

→俳優3人の名演技が終盤のドラマ展開を彩った

 

でした。次回作希望です。

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ブログ主
りかるど

ブラジルのサンパウロ生まれ。5歳で日本へ。
小中高大卒業後、書籍業界へ就職。現在はフリーでブログ運営などネット中心に活動中。趣味は漫画、スポーツ観戦、音楽ライブ、お笑い等。

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