[雑記] 「水は海に向かって流れる」の面白いポイントはココ

 

先日発表されたこのマンガがすごい!2020で

オトコ編の5位にランクインした

水は海に向かって流れる

これが今自分の中で面白いと話題です。

 

まだ田島先生の他作は読んでいないので

これから読んでいこうと思いますし、

別途この作品の紹介記事も書こうと

思いますが、まずは書いておこうと思ったこと。

 

この作品って主人公の直達を中心に描かれて

いきますが、基本的には群像劇に近いです。

 

直達は高校進学にあたり、おじを頼って、

ある家に世話になります。

その家がおじを含めて色々な人達が

出入りしているのですが、これがまた

数奇な繋がり方をしていたという話です。

 

ここには恋愛もあれば家族問題もあり、

そこで起きる出来事が淡々と描かれて

いくのですが、この作品が特徴的なのは

全員が動いているということです。

文字で表現するのは難しいのですが、

漫画に限らず、1人を中心とした人間

ドラマって、周りの価値観や意見は

主人公が関わらない限り変わりません。

 

 

でも現実にはそんなことは決して無い。

みんなそれぞれの考えを巡らせて行動

していくのです。

水海は、そこを丁寧に生々しく描いていて

みんな自分勝手に動き回ります。

だから主人公直達が描いて思っていた事柄が、

おじや榊さん、泉谷さんが動いたことで

いつの間にか、話が進行していたりします。

 

1人視点だと、こういう変化って読者の中で

解釈して行間を埋めていくところになりがち

ですが、ここでは細かい行動や心境の変化も

しっかり描写していくのです。

 

そうした中で印象的だったのが2巻の直達の

「なんでみんな俺がいいなりに

なると思ってんだろう・・」

という言葉で、これは正にそのとおりで、

ぶっちゃけこれは直達の自分へのブーメラン

だとも思うのです。

 

人って基本は決めつけでコミュニケーションを

取りがちで、そこで相手の反応で気付ける人は

自然に修正をして意思疎通へ導けるのですが、

出来ない人はずっと出来ない。

もしくは榊さんのように別の感情が加わることで

鈍くなるといったように。

 

直達は思春期でその出来る出来ないの真っ只中に

いる気がして、そこがとてもリアルに感じられます。

 

 

この作品もう1つ面白いなと思ったのが、

ほとんどの出来事が、最初は伝達から始まる

というところです。

 

この作品って、竹を割ったような人、物事を

直球でズバズバ聞いたり言っちゃう人がいません。

直達ママはそれに近いかとも思いましたが、

頭をぶつけた理由は伝えませんでした。

彼らは直接聞けないからほとんどの場合、その

周りの事情を知ってる人に聞いてから動いて、

場合によっては更にもう1クッション置いてから

ようやく本人に事実を確認します。

もちろんこの作品の場合、結構重めな事情が

あるから、でもあると思いますが、読み進めると

本当にそういうシーンが多い。

 

そういうコミュニケーションに1クッション置く

接し方も生々しくて、一般的な漫画のように

1人コミュ力がずば抜けてる人があっさり

みんなが躊躇していた事を聞くことで突破口が

開けるという展開はいまのところありません。

(教授が若干やりそう感あり)

 

でもそれが普通なんだと思います。この作品は

数人変わり者はいますが、人とのコミュニケーション

においてはいたって普通か苦手な人達中心。

 

だから話としては、複雑な人間関係はあるものの

殺人ゲームが始まったり、超能力者がいたり

といった非現実なことは起こりません。

何かが起きるにしても探偵のくだりのように

予兆がちゃんと描かれる。だから

あくまで出てくる人たちは普通の人。リアルな人。

絵柄が可愛らしいからそう思えなくなりがち

ですが、あくまで現実の範囲内の人々。

 

だからこの作品は、簡単な言葉にしたら

普通の人の輪の中に、ポンっと重いテーマを

投げ入れたらこうなるよ

ていう話なんだと自分では思っておきます。

 

 

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ブログ主
りかるど

ブラジルのサンパウロ生まれ。5歳で日本へ。
小中高大卒業後、書籍業界へ就職。現在はフリーでブログ運営などネット中心に活動中。趣味は漫画、スポーツ観戦、音楽ライブ、お笑い等。

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