[おすすめ漫画] 苦悩と秘密が渦巻くひとつ屋根の下の物語! 水は海にの3つのおすすめポイント「田島列島 / 水は海に向かって流れる 1巻」作品紹介と感想

作品・作者に関して

タイトル:水は海に向かって流れる

掲載雑誌:別冊少年マガジン (2018-)

作者:田島列島

代表作→子供はわかってあげない(2014)

         →田島列島短編集ごあいさつ(2019)

あらすじ

「俺がいなければ、この人の肩が濡れることはなかったのに」高校への進学を機に、おじさんの家に居候することになった直達。だが最寄の駅に迎えにきたのは見知らぬ大人の女性の榊さん。案内された家の住人は26歳OLの榊さんとなぜかマンガ家になっていたおじさんの他にも女装の占い師、メガネの大学教授といずれも曲者揃いの様子。ここに高校1年生の直達を加えた男女5人での一つ屋根の下、奇妙な共同生活が始まったのだが、直達と榊さんとの間には思いもよらぬ因縁が……。久しぶりに始動した田島列島が自然体で描くのは家族のもとを離れて始まる、家族の物語。

田島先生は「子供はわかってあげない」で

長編デビューをし、今作は本格的な連載の

2つ目です。先生の作品は、ギリギリ少し

非現実な重め設定が入る以外、のんびりと

した世界観で、雰囲気は軽めながら、

登場人物たちがそれぞれの悩みを抱えながら

前に進もうとしています。

本作も、そういった世界観が、若者を中心に

大人が介入していく形で存在しています。

 

おすすめポイント

・雰囲気の柔らかさ
・登場人物たちが常に動いている
・主人公の成長

 

雰囲気の柔らかさ

まず絵のタッチの力も大きいですが、

この作品の雰囲気はとても柔らかいです。

主人公の直達と榊をめぐる、そこそこ重めの

テーマがあるのですが、雰囲気が良いので

そこまで不快な感情にもなりません。

 

登場人物も温和な人達ばかりで、話も静かに

展開していきます。

かといってそこにトラブルが発生していない

わけではなく、本当に日常の中に問題が

発生しているというリアルさにも繋がって

います。

 

 

登場人物たちが常に動いている

 

これは12/14の雑記にも書きましたが、

1人(主に主人公)が、相手が何を考えているか、

どう接するべきかを考えている時、普通の漫画

なら、その間、相手の考えは何故か変わらない

ままで、主人公だけが変わって、話が進むんです

けど、この作品は相手側もその間に、色々考えて

展開していくため、主人公が行動を起こした時には

また別の展開がすでに始まっているということが

度々起こります。

 

 

でも現実もそういう事って度々起こると思っていて

人と人のすれ違いなんて「相手はこう思っているに

違いない」「こう感じてくれるに違いない」から

スタートしてそのままそれで押し切ってしまった時に

起きるものだから、そういう常に流動する人と人の

やり取りがリアルに描かれているのが面白いんです。

 

 

予定調和なストーリーも良いですが、こういう

常に移ろう作品も良いと思います。

 

主人公の成長

 

そうやって流動する中で、主人公・直達は

まだ高校生で恋愛も大人の話も経験不足です。

 

最初は歯がゆさばかり感じる彼の受け止め方や

行動ですが、間違えながら少しずつ学んで前進

していくところが、思春期の少年のリアルさが

出ています。

 

 

そしてそれは、決して急激な変化・成長では

なく本当に細かいので、会話の感じからその

部分を見つけるのもこの作品を楽しめる

ポイントになると思います。

 

あとは単純に、全力で青臭い直達を

見ているのが楽しいです。青春してるなぁ

苦悩してるなぁってのが大人目線だから

かもしれませんが、見ごたえがあります。

 

 

1巻感想・まとめ

 

読み始めはもっとギャグ寄りの

日常作品かと思いましたが、2話の

終わりぐらいから若干不穏さが表に

出てきて、少しずつ複雑な事情が

分かっていく流れが秀逸でした。

 

家で直達が知らずに核心を突くような

質問を投げかけるたびに変な空気に

なり、その事情が思いがけず分かると、

今度は無理に知らないふりをして、

また気まずくなる。

でもやっぱり詳しく知りたいから

周りに聞き始めるけど、一発で真相が

分かる本人には直接聞けないから、

物事が人づてでばかり進んで、中々

向き合わない。

 

ここらへんは特に日本らしいというか

すごく生々しいと思います。

こういう時、他の漫画では竹を割った

ような性格のサブキャラが空気をあえて

読まずに直球勝負をして話が進むのですが、

ここにそういうキャラはいないので、

実に周りくどく進んでいくのが逆に面白い。

 

この作品は、キャラが魅力的!とか

ギャグが面白い!とかではなく、

キャラ同士の会話、やり取りがメインだと

思っています。そこに色んな感情や人間関係

が乗っかって様々な色を見せるのが最大に

面白い部分です。

普段こういうタイプの日常に近い作品は

読まないのですが、これはハマりました。

 

「俺がいなければ、この人の肩が濡れることはなかったのに」高校への進学を機に、おじさんの家に居候することになった直達。だが最寄の駅に迎えにきたのは見知らぬ大人の女性の榊さん。案内された家の住人は26歳OLの榊さんとなぜかマンガ家になっていたおじさんの他にも女装の占い師、メガネの大学教授といずれも曲者揃いの様子。ここに高校1年生の直達を加えた男女5人での一つ屋根の下、奇妙な共同生活が始まったのだが、直達と榊さんとの間には思いもよらぬ因縁が……。久しぶりに始動した田島列島が自然体で描くのは家族のもとを離れて始まる、家族の物語。

 

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りかるど

ブラジルのサンパウロ生まれ。5歳で日本へ。
小中高大卒業後、書籍業界へ就職。現在はフリーでブログ運営などネット中心に活動中。趣味は漫画、スポーツ観戦、音楽ライブ、お笑い等。

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